大豆の栄養成分と納豆菌の発酵パワーが加わった納豆は日本が誇る発酵食品です。
納豆に含まれる栄養成分は高く、健康や美容面に良い効果をもたらすことが期待されています。
納豆には具体的にどんな栄養成分が含まれ、どんな健康効果が期待できるのでしょうか。
そこで、納豆に含まれる栄養成分と健康効果をまとめてみました。
納豆に含まれる成分
納豆に含まれる栄養成分と働きを以下にまとめました。
たんぱく質
炭水化物、脂質とともに三大栄養素のひとつと呼ばれているたんぱく質。
たんぱく質は、筋肉をはじめ、内臓、皮膚、髪の毛、爪、血液細胞、ホルモンなど体のあらゆる組織を作るのに欠かせない栄養素です。
私たちの内臓、髪の毛や爪が健やかに保たれているのは、たんぱく質のおかげです。
たんぱく質が不足すると、成長障害、体力や免疫力の低下などが起こり、内臓や皮膚、髪の毛や爪などに異常が出てきます。
たんぱく質はアミノ酸がたくさん連なってできています。
体を作るうえでアミノ酸は必要不可欠ですが、体内で作ることができない種類のアミノ酸(必須アミノ酸)は食事によって摂取せねばなりません。
必須アミノ酸は全部で9種類存在していますが、これら9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれているたんぱく質こそが、良質なたんぱく質といえます。
この9種類の必須アミノ酸すべて含んでいるのが納豆なのです。
たんぱく質には、肉や魚、卵に含まれる「動物性たんぱく質」と大豆類に含まれる「植物性たんぱく質」の2つに分けられます。
納豆は大豆が原料ですから、もちろん植物性たんぱく質です。
大豆に含まれる植物性たんぱく質は、コレステロールの低下、中性脂肪を下げるといった大豆特有の効果が見られます。
納豆に含まれるたんぱく質の量は、1パック(50g)につき、7.4gで、これは牛肉肩ロース45g分のたんぱく質が含まれていることになります。
脂質
脂質は、炭水化物、たんぱく質と並ぶ、三大栄養素のひとつ。
体内で効率の良いエネルギー源になったり、細胞膜やホルモンの材料となるなど、さまざまな役割を果たしています。
脂質を作るベースは、「脂肪酸」です。
脂肪酸にも「飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」の3種類があります。
「飽和脂肪酸」は、肉やバターに多く含まれ、摂りすぎるとコレステロールや中性脂肪が増加します。
「一価不飽和脂肪酸」は、オリーブオイル、サフラワー油に多く含まれており、血中のコレステロール減らす作用があります。
納豆の原料である大豆に多く含まれるのが「多価不飽和脂肪酸」です。
多価不飽和脂肪酸には、体内で合成できない必須脂肪酸で発育や成長に欠かせない脂肪酸と言われています。
炭水化物
炭水化物はたんぱく質と脂質と並ぶ、三大栄養素の一つです。
栄養学上、炭水化物にはエネルギー源となる「糖質」と消化酵素で消化することができない「食物繊維」がありますが、ここでは炭水化物の「糖質」についてみていきたいと思います。
糖質の主な働きは、体のエネルギー源となること。
脂肪も体のエネルギー源になりますが、脂肪よりも炭水化物の方が速やかにエネルギーになりやすい特徴があります。
脳や赤血球で使われるエネルギー源は糖質であるブドウ糖のみ。
ブドウ糖が必要な脳や神経で不足が起こると、脳の思考力や集中力の低下、疲れやすさ、ひどい場合は意識障害が起こるケースもあるようです。
逆に過剰に摂取した場合、中性脂肪として蓄えられ、肥満や生活習慣病を招く恐れがあります。
ビタミン
ミネラルと並んで微量栄養素と言われているビタミン。
ビタミンは、糖質や脂質のように体を動かすエネルギー源にはなりません。
しかし、三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)がうまく機能できるよう代謝を促進する働きがあります。
つまり、機械(三大栄養素)がスムーズに動くために潤滑油のような働きを担っているのがビタミンなのです。
体内では生産されないため、ビタミンが含まれた食材を食べるなど、外部から摂取せねばなりません。
納豆に含まれるビタミンとその働き
ビタミンK
世に出回っている食品の中で最もビタミンKを含んでいるのが納豆です。
怪我で出血した際、血液を凝固する働きやカルシウムを骨に吸着する働き(骨粗しょう症の予防)があります。
ビタミンB2
納豆には疲労回復に効果のあるビタミンB群がとっても豊富!
その中でもビタミンB2は、肌や粘膜の健康を保つ働きやエネルギー代謝に欠かせない栄養素です。
皮脂分泌を調節する働きがあるため、別名「皮膚のビタミン」と言われています。
ビタミンB2が不足すると口内炎や舌炎など口周辺にトラブルが起こりやすくなります。
納豆1パック(50g)で0.25mgのビタミンB2を摂ることができます。
これは、豚肉の肩ロース100g分に匹敵します。
ビタミンB6
ビタミンB6は、細胞の新陳代謝を促し、発育促進や生殖機能の活性化に役立つビタミンです。
たんぱく質がアミノ酸に分解する過程にかかわり、たんぱく質の利用効率を高めてくれる働きもあります。
納豆に含まれるビタミンB6の量は、1パック(50g)に0.11mgで、銀杏80粒分に相当します。
ビタミンE
ビタミンEは、筋肉の緊張を和らげ、血液循環を促す働きがあります。
また、活性酸素による老化を抗酸化作用により予防するため、「若返りビタミン」と言われているほど。
納豆に含まれるビタミンEの量は、1パック(50g)に0.5mgで、これはトマト1/2個分に匹敵します。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質の代謝をスムーズにおこなうために必要不可欠なビタミンで脳や神経系の働きの維持や調整に大きな役割を担っています。
脚気や全身の疲れを取り除くという働きも期待されており、ビタミンB1が不足すると全身の倦怠感(だるさ)、疲労、食欲不振につながってしまうといわれています。
ミネラル
ミネラルとは、主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称で無機質ともいいます。
代表的なミネラルといえば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など。
人間の体に必要とされるミネラルは16種類とされ、これを必須ミネラルと呼んでいます。
ミネラルは、神経伝達を正常に保ち、エネルギー代謝を助ける働きを持っています。
他にも、骨や赤血球、ホルモンなど体をつくる材料にもなります。
ミネラルは、ビタミン同様に体内で生産されることができません。
そのため、ミネラルを含んだ食品を食べるなど外部から摂取する必要があります。
ミネラル分が不足すると酵素の働きが悪くなり、代謝が落ちて、疲れやすい、太りやすくて痩せにくい、肌の調子が悪いという症状が出始めます。
過剰に摂りすぎた場合は過剰症を、似たような性質のものばかり摂るとお互いの吸収や働きを妨げることがあるため、バランスよく摂ることが大事になってきます。
納豆に含まれるミネラルとその働き
カリウム
細胞内外のミネラルバランスを維持し、筋肉や心筋の活動を正常に保つ働きがあります。
納豆1パック(50g)に300mgのカリウム(バナナ1本分)が含まれています。
マグネシウム
心臓や血管機能を正常に保ち、動脈硬化などを予防します。
納豆1パック(50g)に45mgのマグネシウム(かき3個分)が含まれています。
カルシウム
骨や歯をつくり、精神を安定させイライラ予防に役立ちます。
納豆1パック(50g)に40gのカルシウム(プレーンヨーグルト1/2個分)が含まれています。
鉄分
たちくらみやめまいの症状を予防する効果があります。
納豆1パック(50g)に1.5mgの鉄分(牛もも肉50g分)が含まれています。
食物繊維
食物繊維は、炭水化物に含まれる多糖の一種で、人間の消化酵素で分解できず、便となって排出される成分です。
便秘予防や改善とした整腸作用だけでなく、脂質や糖質などを吸着して体外に排出する働き、血糖値上昇の抑制など多くの生理的機能が明らかになっていることから、第六の栄養素といわれています。
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2タイプに分けられます。
水溶性食物繊維は、その名の通り、水に溶ける性質をもった食物繊維です。
大腸内で発酵・分解し、腸内の善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えて整腸作用に役立ちます。
また、便をゲル状にし、柔らかい状態に保つことができます。
不溶性食物繊維は、水に溶けない食物繊維です。
腸内で水分を吸収し、大きく膨らみ、腸を刺激してぜん動運動を活発にします。
食物繊維の多くは、便の量を増やし、腸内のビフィズス菌や乳酸菌を増やすことによって便秘を解消します。
腸内における発がん物質の生成を抑えたり、心筋梗塞のリスクを低下が見られたとの研究結果も発表されています。
納豆が便通改善に良い理由
栄養成分がたっぷり入っている納豆パワーですが、便通改善にも良いことをご存知でしたか?
では、なぜ納豆が便通改善に効果的なのか、その理由を考えてみたいと思います。
食物繊維の多さ
納豆は1パック(50g)あたり約3gの食物繊維が含まれています。
食物繊維3g分というと、ゴボウ50g、ニンジン1本分に相当します。
ホウレン草だと100g、レタス1個分にも値します。
もし、これと同等の食物繊維をサラダで補おうとするとお皿で山盛りの量(150gほど)食べないとならず、容易ではありません。
たった納豆1パックでこれだけの量の食物繊維を摂取できるのは実に効率的です。
納豆は大豆が原料ですから、不溶性食物繊維、水溶性食物繊維、どちらの種類の食物繊維もバランスよく摂取することができます。
不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、腸を刺激することで便通を促します。
運動不足や腹筋の弱さで起こりやすい「弛緩性便秘」の解消に役立つとされています。
水溶性食物繊維は、ネバネバした粘着性と保水力の高さにより、便を柔らかくし、スムーズな排便に導いてくれる食物繊維です。
不規則な生活やストレスで起こりやすい「けいれん性便秘」の解消に役立ちます。
納豆に含まれる食物繊維の量は、不溶性食物繊維が2g、水溶性食物繊維が1gとなります。
食物繊維の効率的な摂り方として、不溶性2に対して水溶性1という割合がベストであると専門学的に言われています。
食物繊維の割合としてみると納豆はまさにベストな割合です。
納豆は、1パック(50g)で3gの食物繊維が摂れ、不溶性と水溶性どちらの食物繊維も含まれています。
これが腸内環境を整え、便秘解消につながる理由のひとつでしょう。
納豆菌の働き
納豆は、大豆を納豆菌で発酵させることによってつくられます。
納豆菌とは、枯草菌の一種で、稲のワラに多く生息し、種子のような休眠状態にある芽胞(がほう)の状態で付着しています。
納豆菌の特徴は、この芽胞(がほう)にあります。
周囲の環境が増殖に適さない状態になると、生きるための手段として耐久性の高い特殊な殻「芽胞(がほう)」を作り、どんな過酷な環境でも生き延びます。
たとえば、日光や乾燥、100度以上の高熱、マイナス100度という低温であっても死にません。
乳酸菌やビフィズス菌は、胃酸によって死んでしまう場合も少なくありません。
しかし、納豆菌は酸に強い性質を持っているため、胃酸で死滅することなく、しぶとく大腸まで生きた状態でたどり着きます。
無事、腸内にたどり着いた納豆菌は、善玉菌のエサとなり、乳酸菌やビフィズス菌を増やします。
納豆菌の最大の特徴が、腸内の悪玉菌を弱らせることにあります。
大豆が納豆菌によって発酵するときにジピコリン酸という成分ができます。
参考:http://www.natto.or.jp/kenkou/nattokin/nat10.html
このジピコリン酸という成分は、強い抗菌作用を持っています。
その結果、悪玉菌や腐敗した菌を排除し、腸内環境のバランスを整えることができます。
便秘気味の男女45人に1日50gの納豆を2週間食べてもらった結果、排便回数や排便数が増加したとうデータ結果が出ました。
納豆菌自身も善玉菌としてもともと腸内に棲んでいるもの、ビフィズス菌や乳酸菌との相性もよく、これらを同時に摂取することで相乗効果が期待できます。
まとめ
納豆は大豆を原料とし納豆菌の発酵によって作られた発酵食品です。
たんぱく質、脂質、炭水化物といった三大栄養素をはじめ、体の調子を整えるビタミンやミネラルがバランスよく入っている万能食品といえます。
特に注目すべき効果といえば、腸内環境の改善です。
腸内環境が整い、便秘が解消する理由は、納豆に含まれる食物繊維の多さと納豆菌のパワーによるものです。
納豆には、多くの食物繊維が含まれています。
食物繊維の効率的な摂り方は、不溶性食物繊維2:水溶性食物繊維1です。
納豆はまさにこの不溶性2:水溶性1の割合で含まれています。
納豆に含まれる納豆菌の最大の特徴は、腸内の悪玉菌を弱らせることです。
大豆が納豆菌によって発酵する際にできるジピコリン酸という成分の持つ抗菌作用によって悪玉菌を死滅させ、善玉菌優位の腸内環境を維持することができます。
納豆には、乳酸菌やビフィズス菌は入っていませんが、食物繊維と納豆菌が豊富に含まれています。
納豆は、ヨーグルト同様に腸内環境を整えるうえで欠かせない食べ物と言えるでしょう。